形は覚えたけど、使えていない
三尊天井、ダブルボトム、カップウィズハンドル。テクニカルの本を開くと、いろんな形が出てきます。
一通り覚えました。でも、実際のチャートを開いたときに、まったく結びつかないんですよね。
これは三尊なのか、ただの上下動なのか。判断がつかない。本に載っているお手本はあんなに分かりやすいのに、目の前のチャートはぐちゃぐちゃに見える。
たぶん、覚え方が悪いんだと思います。
形だけ暗記しても、その形が今できつつあるのかは分からない。右肩ができて初めて三尊と呼べるわけで、右肩の途中では「まだ上に行くかもしれない上昇トレンド」にしか見えないので。名前がつくのは、いつも終わった後です。
なので、こう考え直してみました。
形を覚えるんじゃなくて、なぜあの形になるのかを覚えたほうがいいんじゃないか。
三尊の右肩が頭に届かないのには、たぶん理由がある。ダブルボトムの2つ目の底が支えられるのにも理由がある。その理由さえ分かっていれば、形が完成する前でも「今どっちの力が強そうか」くらいは考えられる気がします。
この記事は、それを1地点ずつ考えてみた記録です。まだ実戦で使えている段階ではありません。
前提:チャートは、含み損益の記録なんじゃないか
先に、この記事全体の土台にしている考え方を1つだけ。
チャートって、つい「株価の推移」だと思って見てしまいます。でも、もう少し生々しいものが写っているような気がしていて。
たとえば株価2,000円のところに長く滞在したチャートは、「2,000円で買った人がたくさんいる」ということでもあります。そして、その人たちがどう動きたいかは、なんとなく想像がつく。
1,800円まで下がったら含み損なので、2,000円に戻ってきたら売って逃げたい。逆に2,200円まで上がったら含み益なので、2,000円まで落ちてきたらもう一度買いたい。
つまり、人がたくさん買った価格帯は、それだけで支持線や抵抗線になる。線に特別な力があるわけじゃなくて、そこにいる人たちの都合が価格を跳ね返しているだけなのかな、と思っています。
だから出来高が効いてくる。出来高は「その価格帯に何人いるか」の目安なので。
これを頭に置いた上で、2つの形を見ていきます。
三尊天井|買い手が静かに減っていく

① 左肩|まだ誰も疑っていない
上昇トレンドの途中で、いつも通り押した場面です。ここまで上げてきた実績があるので、押し目買いが素直に入ります。出来高も伴っている。
この時点では何も起きていません。何も起きていないことが、後から見ると効いてくる気がします。
② 頭|高値を更新したのに、出来高が細い
高値を更新しました。チャートだけ見れば一番強いところです。
でも、ここで静かに変なことが起きていて。出来高が左肩のときより減っている。
値段が上がっているのに参加者が増えていないというのは、買いたい人がもう残り少ないということなんだと思います。ここで買っているのは、上げを見て我慢できなくなった最後の層。一番高いところで、一番余裕のない状態で入った人たち、ということになります。
③ 頭からの下落|含み損の在庫が溜まる
下げ始めます。この時点ではまだ「いつもの押し目」に見えるので、押し目買いも入る。
ただ、1つだけ変わったことがあります。②で買った人が、全員いきなり含み損になった。
たぶん彼らは損切りしません。まだ戻ると思っているので。だから今すぐ売りは出ないんだけど、代わりに「戻ったら売る」という予約が、その価格帯に溜まっていく。
④ 右肩|戻り売りに阻まれる
反発します。でも、頭の高値には届きません。
なぜ届かないのか。③で溜まった売りが、上がるそばから出てくるからじゃないかと思っています。
だとしたら、右肩の高さは、頭で捕まった人の量そのものということになる。右肩が低いほど、上に詰まっている人が多い。
ここが三尊の一番おもしろいところかもしれません。右肩が低いのは形の決まりごとじゃなくて、単に物理的な結果なんじゃないか、という。ただ、これは自分でまだ検証できていないので、あくまで仮説です。
⑤ ネックライン割れ|押し目買い派が損切りに回る
そしてネックラインを割ります。ここで出来高が増える。
何が起きているかというと、それまで支えていた押し目買い派が「今回は違う」と気づく瞬間なのかなと。
彼らはネックライン付近で買っています。割れたということは、彼ら自身が含み損になったということ。ここまで買い手だった人が、一斉に売り手側に回る。だから下げ足が速くなる。
⑥ リターンムーブ|支持線が抵抗線に変わる
割れた後、一度ネックラインまで戻ってきて、そこで跳ね返されることがあります。
理屈は単純で、さっきまで支持線だった価格は、そこで買って含み損になった人にとっての脱出口になっているから。同じ線の役割だけが入れ替わる、と。
なお「ネックラインから頭までの値幅分だけ下がる」という目標値の話がよく出てきますが、これは経験則で、心理的な裏付けはあまり無い気がしています。自分は目安くらいにしか見ていません。
ダブルボトム|今度は売り手が減っていく

三尊が「買い手が消えていく」話だとすると、ダブルボトムは売り手が消えていく話になります。構造がちょうど裏返しなんですよね。
① 1つ目の底|投げ売り
下落が続いて、我慢の限界が来た人が投げます。出来高が急増するのが特徴です。
パニック的な売りなので価格が行き過ぎる。売りが一巡すると、ちょっとの買いでも戻ります。
② 戻って、頭打ち|ここでネックラインができる
反発しますが、途中で止まります。上で買って耐えていた人の戻り売りが出るので。
この止まった価格がネックラインになる。誰かが引いた線じゃなくて、売り注文が溜まっている実際の水準ということになります。
③ 2つ目の底|たぶんここが本番
もう一度下げて、1つ目の底の近くまで戻ってきます。
形だけ見れば①とほぼ同じ位置です。でも中身が違う。
| 1つ目の底 | 2つ目の底 | |
|---|---|---|
| 出来高 | 急増 | 減っている |
| 売っている人 | 我慢の限界が来た層 | もうあまり残っていない |
| 意味 | 投げの最中 | 投げるべき人が投げ終わった |
つまりダブルボトムって、形が2つ底であることより、2度目のほうが売り圧力が小さいことのほうが本体なのかもしれません。
だとすると、出来高を見ずに形だけ見ても意味がない。2つ目の底の出来高が1つ目より多かったら、それはダブルボトムじゃなくて、まだ下げの途中、ということになりそうです。
④ ネックライン突破
②の水準を上に抜けます。ここで2種類の買いが同時に入る。
1つは空売りの買い戻し。下を狙っていた人が逆行して損切りするので、それが買いになります。もう1つは「底を打った」と判断した新規の買い。
売り方の損切りが買いに変わるので、上昇が加速しやすい。出来高が増えるのはこのためだと思います。
⑤ 押し目|抵抗線が支持線に変わる
抜けた後、ネックラインまで押して支えられます。三尊の⑥とまったく同じ理屈の裏返しです。
そこで買い逃した人が「戻ってきたら買う」と待っている。だから支えになる、と。
2つに共通していたもの
こうして並べてみると、名前も形も違うのに、同じ部品でできている気がします。
1つは、含み損の人は建値に戻ると逃げたくなるということ。これが上値の重さと下値の堅さを作っている。
もう1つは、出来高は残っている人数を表しているということ。値段が動いているのに出来高が細いのは、参加者が入れ替わっていない証拠で、上昇なら買い手の枯れ、下落なら売り手の枯れを意味する。値段より先に出来高が変わる、という順番なのかもしれません。
最後に、支持線と抵抗線は入れ替わる。線が抜けた瞬間に、そこで買った人の立場が反転するからです。線の性質じゃなくて、人の都合なんですよね。
この3つで説明がつくなら、名前を知らない形が出てきても同じように読める気がします。
ただ、正直に書いておきたいこと
ここまで書いておいてなんですが、この読み方には大きな弱点があります。
後から見れば、どんなチャートでも説明がついてしまう。
上がれば「買い手が残っていた」と言えるし、下がれば「買い手が枯れていた」とも言える。今書いた説明も、全部完成したチャートを見てから書いています。ずるいと言われれば、その通りです。
なので実際に使うなら、1つ条件が要るのかなと思っていて。
読みが外れたと分かる価格を、先に決めておく。
「三尊っぽいから下がるはず」じゃなくて、「三尊だと思っている。もし右肩の高値を超えたら、この読みは間違いなので降りる」。こう決めておけば、当たっても外れても、損の大きさは自分で決められます。
チャートパターンは、当てるための道具というより、間違いに早く気づくための基準なのかもしれません。今のところの落としどころはこのあたりです。
おわりに
形を丸暗記していた頃は、チャートを見るのが暗記テストみたいで、正直しんどかったです。
「この価格帯にいる人は、今いくら損してるんだろう」と考えるようにしてから、ちょっと面白くなった気がします。少なくとも覚えることは減りました。
ただ、冒頭に書いた通り、実際のチャートを開いて「これは三尊だ」と判断できるところまでは、まだ来ていません。たぶん次に必要なのは、形そのものより、形を作っている要素のほうなんだと思います。出来高とか、移動平均線とか、RSIとか。
そのあたりを次に調べてみるつもりです。
※この記事は個人の学習記録と考え方の整理であり、特定の銘柄や手法の推奨、投資成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。



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